Alex Bugnon / Any Love - 夜景に溶けるピアノが言葉のない愛を語りかける…都会派Smooth Jazz

Alex Bugnon / Any Love

▶︎

言葉を削ぎ落とし、鍵盤だけで愛を語る選択

スイス出身のジャズ・ピアニスト Alex Bugnon が1990年にリリースした12インチシングル Any Love は、インストゥルメンタルでありながら、これ以上ないホド歌心に満ちた名演として語り継がれている1枚です。US盤オリジナル Promo 12インチというフォーマットも象徴的で、当時のクラブDJやラジオが「夜の時間帯」にこの曲を選び続けた理由が、針を落とした瞬間からハッキリと伝わってきます。この楽曲は1988年に Luther Vandross が歌い上げた至高のラヴ・バラードのカヴァーですが、完璧すぎるヴォーカル表現ゆえ誰もが敬遠しそうな名曲に、Alex Bugnonはあえて「言葉を削ぎ落とす」という選択で挑みました。


夜景に溶け込む透明なピアノ・トーン

イントロから立ち上がる透明度の高いピアノ・トーンは、まるで夜の摩天楼を静かに見下ろすかのような佇まい…ひとつひとつの音が丁寧に配置され、旋律そのものが呼吸をしているようにカンジられます。グルーヴは決して前に出過ぎず、しかし芯は太い…ベースラインはクワイエット・ストーム期R&Bの質感を保ちながら、ホーンやシンセのレイヤーが都会的な奥行きをそっと加えています。サビに向かってピアノが連打される場面では、リリックに込められていた「それでも愛を求めてしまう切なさ」が、コトバ以上の説得力で胸に迫ってくるのが印象的ですね。


ヴォーカル不在が生む余白の美学

ヴォーカルがないからこそ、聴き手それぞれの記憶や感情が自然と投影される…その余白の美学こそが、この Any Love を特別な存在にしています。リリース当時、派手にチャートを賑わすタイプの楽曲ではありませんでしたが、深夜のFMラジオやアダルト・コンテンポラリー系のDJプレイでは確実に支持を集め、静かな定番として長く愛されてきました。Jazz、R&B、Soulの境界線を違和感なく溶かし合わせるAlex Bugnonのスタイルが、最も洗練されたカタチで記録されている1曲と言えるでしょう。


大人の夜に寄り添う12インチの説得力

派手さはない…しかし、時間を忘れて針を落とし続けたくなる魔力がこの12インチには確かに宿っています。Luther Vandrossのオリジナルを知る人ほど、Alex Bugnonが鍵盤で表現した「タメ息」や「情熱」に深く頷くハズっ!夜景に溶けるピアノが言葉のない愛を語りかける、大人の夜に寄り添う贅沢で静かな名演…この12インチは、その瞬間を確かに閉じ込めています。

 

next recordsのサイトでAlex Bugnonのレコードを探してみる

INDEXに戻る
×