
Art Of Origin / No Slow Rollin’
Deep House前夜に刻まれたストリートの原風景
Deep House前夜、Kerri Chandlerの原風景が奏でるStreet HipHop。今回レコメンドするのは1992年、USアンダーグラウンドからひっそりと放たれたArt Of Origin / No Slow Rollin’。現在はDeep House界の重鎮として知られるKerri Chandlerが、キャリア初期に結成していたHipHopデュオによるデビュー12インチです。当時のKerri ChandlerはまだHouse色ではなく、JazzやSoul、ストリートの空気を吸い込みながら、自身の作風を探っていた時期でもありました…その模索の瞬間が、ココには生々しく刻まれています。
Synthetic Substitution由来の重厚なブレイク
聴くとまず耳を掴むのは、Synthetic Substitution由来の重厚なブレイク…タイトで乾いたキック、奥行きを感じさせるスネア、そこに低くうねるベースラインが絡み、フロアではなく路地裏の体温を伝えてきます。イントロから過剰な装飾はなく、ミニマルな構成のままグルーヴを積み上げていくのが実にKerri Chandler的っ! 緻密なプログラミングと独特のタイム感が、派手さに頼らずともカラダを前へ運ぶ。
Chino XLのフロウが宿す知性と殺気
ラップを担うのはChino XL(Derek Barbosa)…落ち着き払ったトーンの中に、鋭い知性と確かな殺気が宿るフロウは、トラックの硬質さと完璧に噛み合っていますね。リリックは、ストリートで生き抜くための覚悟や自制、軽く流されない姿勢を示すモノ…No Slow Rollin’というタイトル通り、安易な近道を拒むメッセージが、淡々と、しかし強く伝わってきます。
US HipHopが成熟へ向かった1992年という時代
当時のUS HipHopは、Boom Bapの完成度が一段上がり、サンプリングの質感や間合いが評価され始めた時代でもありました。本作はラジオ・ヒットや派手なスクラッチを狙わず、クラブやDJの耳に刺さるストレートな音の説得力で勝負している。Lo-Fiの範疇を超えた生々しさは、今聴いても色褪せません。
B面が示す12インチとしての完成度
B面にも注目したい。B1 Mad At The World は、Sly & the Family Stone / You Can Make It If You Try を下敷きに、疾走感とエネルギーを前面に押し出すサウンドで、A面のストイックさと対を成すこの配置が、12インチとしての完成度を高めていますね。Deep Houseへと至る前夜、Kerri Chandlerのルーツと未来が交差する1枚…ジャンル横断の文脈で語れるこの12インチシングルは、コレクションとしても、DJプレイ時の切り札としても価値が高いですよ。






