
David Bowie / Fashion
冷徹とグルーヴが交錯する、Bowie流ダンス・アイロニーの極致
1980年、David Bowieがアルバム Scary Monsters からシングルカットされた Fashion は、Art RockからPost Punk〜New Waveへと鮮やかに舵を切った時期を象徴する1曲です。デモ段階では「Jamaica」という仮タイトルが付けられていたコトからも分かる通り、Reggaeのリズム感を下敷きにしながら、それを皮肉的に転化した独自のダンス Rockとして完成されている。70年代を通じてSoul、Funk、Electronic Musicと様々な音楽を吸収しながら変化を続けてきたDavid Bowieですが、このFashionではそれまでに培ってきた黒いグルーヴを残しつつ、80年代へ向かう冷たくソリッドな感覚へと大胆にアップデート…まさに時代の変わり目をそのまま音にしたようなサウンドなんですよね。
重厚なベースとRobert Frippのギターが生み出す緊張感
聴いた瞬間、まず耳を支配するのは執拗にループする重厚なベースライン…その上に乗る乾いたドラムは、ドコか突き放すような冷たさを帯びていて、80年代初頭のNew Wave特有の無機質な空気感を鮮明に描き出していますね。そこへ切り込むのが、Robert Frippによる歪んだギター・リフ…鋭利で神経質なフレーズが楽曲全体に緊張感を与え、単なるダンス・チューンでは終わらない攻撃性を付加しているのが実にDavid Bowieらしい。Funk的なベースとビートでカラダを動かしながら、その上では不穏なギターが耳を刺激してくる…気持ち良く踊れるのにドコか落ち着かないという、この相反する感覚がFashionの大きな魅力でしょうね。展開としてはシンプルでありながら、フックでの「Turn to the left…」のリフレインがフロアに強烈な中毒性を生み出しています。このミニマルな構造は、当時のクラブシーンでも機能性の高いトラックとして評価され、ラジオヒットでありながらDJユースにも耐えうる絶妙なバランスを持った1曲と言えるでしょう。
踊らせながら流行を冷ややかに見つめるBowie流アイロニー
リリックでは、移り変わるファッションや流行に対するアイロニカルな視点が貫かれていて「流行に従うコト」の滑稽さや危うさを、David Bowie特有の距離感ある語り口で提示しており、表面的にはダンサブルでありながら、その内側には鋭い社会批評が潜んでいる楽曲となっています。これだけグルーヴィーで踊れる曲なのに、そこで歌われているのは単純な享楽ではなく、人々が同じ方向へ流されていくコトへの冷ややかな視線…このPopと批評性の共存こそが、David Bowieの真骨頂でもあります。流行を生み出す側の象徴のような存在だったBowie自身が、その「流行」というモノを少し離れた場所から眺めて皮肉るという構図も実に面白いですよね。だからこそFashionは1980年という時代を切り取った楽曲でありながら、次々と新しいトレンドが生まれては消えていく現在にも、そのメッセージが妙にリアルに響いてくるのでしょう。
USオリジナル12インチで剥き出しになるFashionのグルーヴ
そしてレコード好きとして注目したいのが、USオリジナル12インチで聴くFashionのサウンドです。アルバムではA面ラストという配置の影響で音圧的にやや抑えられているが、このUSオリジナル12インチではその制約から解放され、ベースの厚み、キックの押し出し、ギターのエッジすべてが格段に前に出て立体的なサウンドを聴かせてくれます。特にフロアでの鳴りを意識したダイナミックな鳴りは、まさに12インチならではの魅力ですよ。同じFashionという曲でも、LPで聴くのと12インチで聴くのでは、グルーヴの感じ方そのものが変わってくる…こういう違いを体感できるトコロがアナログレコードの面白さでもありますね。大きく刻まれた溝から立ち上がるベースとドラムにはシッカリとした存在感があり、そこへRobert Frippのギターが鋭く切り込んでくる。この曲が単なるRockナンバーではなく、ダンスフロアでも機能する強烈なグルーヴを持っていたコトが、12インチで聴くとより鮮明にカンジられます。
70s Funkから80s New Waveへ、時代を切り取った12インチ
70年代のFunk的なグルーヴを引き継ぎつつ、80年代の冷たい質感へと更新したサウンドは、どこか Golden Years にも通じる構造を感じさせるが、その表現はよりソリッドで都会的です。David Bowieというアーティストの面白さは、過去に成功したスタイルへ留まるのではなく、その時代に生まれつつある新しい音を吸収しながら、自分自身のサウンドへと変換してしまうトコロでしょうね。FashionにはFunk、Reggae、Rock、Post Punk、New Waveといった様々な要素が混ざり合っているのに、最終的にはどのジャンルにも完全には収まらないDavid Bowieの音として成立している。ファッションというテーマを借りて、時代そのものを切り取ったこの楽曲は、今聴いてもなお新鮮で鋭いっ!そしてUSオリジナル12インチで聴けば、その冷徹なサウンドの奥に潜んでいた肉体的なグルーヴまでグッと前へ浮かび上がってくる。針を落とせば、そこには踊れる批評とも言うべきDavid Bowieの世界が広がる…ダンスフロアでも、自宅のリスニングでも、この12インチでこそ体感してほしい1枚です。


