
Hasani / Baby Be Mine
甘美なサンプリングが誘う、90sメロウR&Bの隠れた宝石
ソウル・クラシックを受け継いだ90sメロウR&B
90s R&Bの魅力を語るうえで欠かせない要素のひとつが、ソウルの名曲を現代的なビートへと昇華するサンプリング文化でしょうね。そんな時代の美学を見事に体現した1枚が、USのフィメールR&BシンガーHasaniによる唯一のシングル Baby Be Mine です。1995年にリリースされたこの12インチは、本国アメリカではホトンド知られていないマイナー作品ながら、日本のR&BファンやDJの間では知る人ぞ知る名曲として長く愛され続けています。
Between The Sheetsが生み出す極上のメロウネス
聴いた瞬間、耳に飛び込んでくるのはあまりにも有名なあのフレーズ…そう、Isley Brothersの永遠の名曲 Between The Sheets の甘美なメロディラインですね。浮遊感のあるシンセのリフレインがゆったりと空間を満たし、その下ではHipHop的な重厚なビートがタイトに刻まれていく…この時点で、すでに名曲の予感が漂っていますね。そこへ重なってくるのがHasaniのヴォーカル…ハデなフェイクや誇張した表現ではなく、あくまでもライトタッチで語りかけるように歌うそのスタイルが、このトラックの持つドリーミーな雰囲気と見事に溶け合っています。まるで深夜のドライブで流れてきそうな、柔らかく包み込むようなサウンドというカンジです。
歌とグルーヴが美しく調和する構成美
楽曲の構成も実に90年代らしい展開です…イントロのサンプリングがゆったりと空気を作り、ビートが入った瞬間にグルーヴが生まれる。ブレイクではBetween The Sheetsのメロディがより際立ち、そこからサビへとスムースに流れ込む展開は、まさにメロウR&Bの王道的展開っ!ストイックでシンプルながらその分メロディとグルーヴの美しさがじっくり味わえるサウンドを聴かせてくれます。リリックのテーマはタイトル通り、愛する人へ向けたストレートなラブソングで「あなたと一緒にいたい」「この気持ちは本物」といった想いを、飾りすぎないコトバで優しく伝える内容で、曲の温かな空気感とも見事にリンクしています。Between The Sheetsネタの楽曲はHipHopを中心に数多く存在しますが、R&Bナンバーとして歌の美しさをココまで丁寧に引き出している例は意外と少ないと思います。Hasani / Baby Be Mineは、サンプリングの魅力とヴォーカルの魅力が高い次元で融合した好例と言えるでしょうね。
日本のDJカルチャーが育てた隠れた名曲
そしてこの曲が日本で評価された背景も興味深い。アメリカのラジオやチャートが見逃したこの曲を、日本の輸入盤レコード店のバイヤーやDJたちがいち早く掘り起こし、Mixテープなどで紹介したことで口コミが広がり、「隠れた名曲」として定着しました。まさにDJカルチャーが育てた1曲っ!といえますね。決してヒット曲ではないが、針を落とした瞬間にカンジるあの幸福なメロディ…良質なサンプリング、心地よいビート、そして優しく響くヴォーカル…そのすべてが揃ったこの曲は、90sメロウR&Bの魅力を静かに、しかし確実に伝えてくれる名作です。


