Jeffrey Osborne / If My Brother's In Trouble - 気品と熱を宿した、夜に溶けるアーバンなダウンテンポHouse

Jeffrey Osborne / If My Brother's In Trouble

▶︎

気品と熱を宿した、夜に溶けるアーバンなダウンテンポHouse

90年代初頭、ダンス・ミュージックがより洗練された都会的サウンドへと進化していく過渡期において、Jeffrey Osborneが歌ったこの If My Brother's In Trouble は、その流れを象徴するような1曲です。Soulシンガーとしての確かな実力に加え、楽曲提供者としても高い評価を受けてきたJeffrey Osborneの表現力が、クラブ仕様のトラックの上で見事に昇華されています。派手なビートでフロアを強引に盛り上げるのではなく、ヴォーカルが持つ温度感と洗練されたトラックの質感によってジワジワと空気を変えていく…そんな大人っぽいDance Musicの魅力が詰まったナンバーで、HouseとSoulが自然に交差していた90年代初頭ならではのサウンドをカンジさせてくれますね。


ピアノとストリングスが描き出す都会的な空間美

聴くとまず耳に飛び込んでくるのは、無駄を削ぎ落としたタイトなビート…その上に、エレガントに配置されたピアノのコードが静かに広がり、やがてゴージャスなストリングスがレイヤーされていく。この導入だけで、すでに平凡なダンス・トラックではないコトをカンジさせますね。ブレイクでは空間を活かしたミニマルな展開へと移行し、そこにJeffrey Osborneのヴォーカルが滑り込むコトで、グルーヴに一層の奥行きが生まれる…この緩急の付け方は、まさにフロアを知り尽くしたプロダクションの妙ですね。音を次々と足して高揚感を作るのではなく、あえて音数を抑えながらピアノやストリングスの響く余白を残し、その空間そのものをグルーヴとして聴かせる。夜のフロアで大きな音で鳴らした時、この絶妙な「間」がなんとも気持ちイイんですよね。


Shep PettiboneがClub Mixで引き出した楽曲の品格

アルバム・バージョンではアダルト・オリエンテッドなSoulとして機能していたこの楽曲ですが、Club MixではよりダウンテンポなHouseグルーヴへと再構築っ!プロデュースを手がけたShep Pettiboneは、MadonnaやPet Shop Boysといったトップアーティストを手掛けてきたコトで知られますが、本作では派手な演出を抑え、あくまで楽曲の品格を引き出すオーソドックスな方向へと舵を切っています。この引き算の美学こそが、この曲を長く愛される存在へと押し上げている要因でしょうね。さらに、Yvonne Turnerによるアディショナル・プロダクションが、都会的で滑らかな質感を補強しています。ヴォーカル曲を単純にビートの強いDance Mixへ変えるのではなく、Jeffrey Osborneの歌を中心に据えたままクラブで機能するグルーヴへ仕立てていく…リミックスという仕事が単なる派手なアレンジではナイというコトを改めて教えてくれるような仕上がりです。


ピークタイムの後にジワリと効いてくるDJのための1枚

クラブではピークタイムの後半、フロアが落ち着きを見せ始めたタイミングでジワリと効いてくるタイプの楽曲で、DJのセンスが問われる場面で真価を発揮するサウンドに仕上がっています。当時のラジオやクラブ・シーンでは、ハデなヒット曲の裏でこうした玄人好みのトラックがシッカリ支持されていたのも、この時代ならではの面白さです。DJプレイというのは常にフロアを煽り続ければイイというモノではなく、時には少しテンションを落とし、オーディエンスに呼吸する時間を作るコトで、その後の展開がより大きく感じられるモノなんですよね。そんな場面でこういうレコードが1枚あると実に頼もしいっ!派手さではなく曲の質感やヴォーカルの力でフロアを繋ぎ止めるコトができる、まさにDJの引き出しの深さが試されるタイプの12インチでしょうね。


ハデさではなく余韻で魅せる極上のアーバンSoul

リリックはタイトル通り「兄弟が困っているなら手を差し伸べる」というメッセージを軸に、人と人との絆や支え合いの大切さを描いたもの…その温かみのあるテーマと、洗練されたトラックのコントラストが、この曲に独特の深みを与えています。Jeffrey Osborneのヴォーカルは、低域で地を這うような力強さと、高域で突き抜けるような伸びやかさを併せ持ち、その感情表現はまさに圧巻です。甘さと情熱が同居するそのヴォーカルワークが、ダウンテンポのグルーヴと絡み合う瞬間は、思わず聴き入ってしまうハズですよ。そして、こうした余白を活かしたサウンドは12インチで聴くと、ビートの厚みだけではなく、ピアノやストリングスの広がり、そしてヴォーカルの息遣いまで立体的に浮かび上がってくるのも魅力です。ハデさではなく余韻で魅せるタイプの1枚で、夜が深まり、空気が少し冷たくなってきた頃にこそ、その真価を発揮する極上のアーバンSoulです。こういうレコードが1枚バッグに入っているだけで、DJとしての引き出しは確実に広がりますし、リスナーとしても長く付き合える1曲になるハズですよ。少し照明を落としてこの12インチに針を落とせば、Jeffrey Osborneの温かな歌声とスムースなグルーヴが、夜の空気へ静かに溶け込んでいくでしょうね。

 

next recordsのサイトでJeffrey Osborneのレコードを探してみる

INDEXに戻る
×