
Kebekelektrik / Magic Fly
銀河を駆け抜けるシンセの疾走感、若き才能が刻んだ未来の鼓動。1977年、Discoというフォーマットが最も自由に拡張されていた時代に、ひときわ異彩を放っていたのがKebekelektrikによる Magic Fly です。
Spaceの名曲をもうひとつのDiscoへ
フランスのDiscoグループSpaceの楽曲をカバーしたこの曲は、単なるリメイクにとどまらず、当時まだ無名だったGino Soccioの才能を決定づけた重要な作品としてもしられています。聴いた瞬間に広がるのは、無機質でありながらドコか情緒を帯びたシンセサイザーの波…イントロではジワジワとアルペジオが積み重なり、やがてクセのあるベースラインが絡み始めるコトで、フロアに独特の緊張感を生み出します。この引きの美学とも言える導入は、華やかさで押し切るのではなく、聴き手の感覚をジックリと宇宙空間へと誘う設計となっています。
シンセが描き出す宇宙空間
中盤に差し掛かると、鋭く切り裂くようなシンセ・リードが前面に現れ、反復されるリズムとともにトランス的な高揚感を生み出してきていますね。興味深いのは、この楽曲がインストゥルメンタルでありながら、「宇宙的な旅」という明確なイメージをリスナーに想起させる点です。コトバではなく音そのものがストーリーを語る…これはまさにシンセサイザー黎明期ならではの魅力と言えるでしょう。今となってはElectronic Dance Musicにシンセサイザーは当たり前の存在ですが、1977年という時代にこの音像を聴けば、その未来的な感覚はかなり強烈だったはずです。
12インチだからこそ生まれる没入感
そして、この曲の魅力を存分に味わうなら、やはり6分を超える12インチならではのExtendedな構成でしょう。DJにとってもミックスの余白が多く、イントロから徐々にフロアの温度を引き上げ、その世界へと引き込んでいくコトができる秀逸な仕様にアレンジされています。短時間で結論へ向かうポップソングとは対照的に、同じフレーズを反復しながら少しずつ音を重ね、時間をかけて聴き手の感覚を変化させていく。この長さそのものが楽曲の一部であり、当時のクラブシーンでコズミック〜スペーシー路線のサウンドが支持を広げていった理由も、この12インチに針を落とすとよく分かります。
Spaceとは異なるKebekelektrikのグルーヴ
Spaceのオリジナルが持つクールで無機質な美しさに対し、Kebekelektrikのカバーはより肉感的でグルーヴを強調したアレンジとなっており、単なるコピーではなくフロアでの体感を意識した進化形とも言えるサウンドに仕上がっています。機械的なシーケンスが反復されているにもかかわらず、不思議と冷たさだけでは終わらナイ。ベースやリズムが加わるコトで身体を動かすDiscoとしての強さが生まれ、頭では宇宙空間を漂いながら、身体はしっかりフロアで踊らされる。この二面性こそKebekelektrik版 Magic Fly の大きな魅力でしょうね。
若きGino Soccioが刻んだ未来のサウンド
また、この作品は後にDancer や Try It Out といったヒットを生むGino Soccioの出発点でもあります。学生時代にここまで完成度の高いサウンドを作り上げていたという事実は驚異的であり、その後の作品にもつながっていくシンセサイザーの使い方、反復によってグルーヴを生み出す感覚、そしてElectronicな音で人を踊らせるセンスの原型が、この1曲にはすでに鮮明に刻まれています。1977年という時代が描いた「未来」を現代の耳で聴くとき、この Magic Fly は単なるDisco Classicではなく、その後のElectronic Dance Musicへとつながっていく音の実験としても響いてきますね。Cosmic Discoの原型とも言えるこの1曲、もしまだ未体験であれば、ぜひ12インチのExtendedバージョンでその没入感を味わってみてくださいっ! 針を落とせば、そこには確かに魔法 (Magic)が存在しています。

