Paul Hardcastle / Just For Money - 80s Electroが持つ疾走感と哀愁 その両極を鋭く撃ち抜く社会派グルーヴ

Paul Hardcastle / Just For Money

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80s Electroが持つ疾走感と哀愁、その両極を鋭く撃ち抜く社会派グルーヴ。1985年、UKエレクトロニック・ミュージックの最前線に立っていたPaul Hardcastleが放ったJust For Moneyは、代表曲19やRain Forestと同じセルフタイトル・アルバムからのシングルカットであり、彼のサウンド美学とメッセージ性が最もストレートに表れた1曲です。USオリジナル12インチで聴くこの楽曲は、単なる80s Electroヒットの枠を超え、クラブ、ラジオ、リスニングのすべてを射程に収めた完成度を誇っています。


疾走するElectroビートと哀愁のメロディ

聴いた瞬間、タイトに刻まれるドラムマシンと疾走するシンセ・ベースがイッキにフロアを引き締めるっ!アップテンポながら冷ややかさを感じさせるリズム設計は、19を思わせる戦略的Electro路線。その上を漂うのが、Paul Hardcastleの十八番とも言える哀愁を帯びたキーボードのメロディです。明るさと陰り、その両方を内包した旋律が、無機質なビートに人間的な感情の奥行きを与えていきます。


映画の断片が描く拝金主義への視線

本作の大きな特徴が、Bob Hoskins、Ed O’Ross、Laurence Olivierといった名優たちの映画セリフを用いたヴォイス・サンプルの多用ですね。一見すると雑多に感じられるこれらの断片は、「金のために人は何をするのか」というテーマを象徴する装置として見事に機能しているっ!シンセ、SE、ヴォイスが幾層にも重ねられながらも混濁しないのは、Hardcastleならではのアレンジ・センスの賜物だろう。


80年代社会を映すリリックと存在感

リリックはタイトル通り、拝金主義や欲望に振り回される人間社会への皮肉を含んだ内容で、80年代半ば、冷戦や資本主義の歪みがPopミュージックにも色濃く反映されていた時代背景を考えると、この楽曲が持つ社会的視線は非常に象徴的ですね。当時はクラブだけでなくラジオでも強い存在感を放ち、Electroを単なるダンス・ミュージックから「語る音楽」へと押し上げる役割を果たしました。


12インチで完成するDJユースとB面の魅力

12インチにはブレイクが拡張されたExtended Versionを収録。中盤で一度テンションを落とし、再びビートが戻る構成はDJユースとしても極めて優秀だ。そしてB面「Back In Time」はアルバム未収録ながら、Rain Forest系譜のトライバルで浮遊感あるエレクトロ・チューン。こちらを目当てに探すコレクターが多いのも頷けます。80sエレクトロ、シンセ・ポップ、社会派ダンス・ミュージック、そのすべてを横断するこの12インチは、今あらためて針を落とすことで、Paul Hardcastleというアーティストの先見性を強く実感させてくれる1枚だ。

 

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