
Vanessa Paradis / Be My Baby
甘く囁くウィスパーとヴィンテージ・グルーヴが溶け合う永遠のPop
Vanessa Paradisの代表曲として語り継がれる Be My Baby は、1992年という時代において過去と現在をつなぐ極めて完成度の高いPopチューンとしてリリースされました。プロデュースを手がけたのは当時パートナーでもあったLenny Kravitz。Lenny Kravitzの持つヴィンテージ志向のサウンドメイクと、Vanessa Paradisのアンニュイで儚いボーカルが奇跡的なバランスで融合しています。90年代初頭というとDance MusicやHipHop、Alternative Rockなど様々な新しいサウンドがイッキに広がっていた時代ですが、そんな中であえて60年代のSoulやガール・グループを思わせる音楽へ視線を向けながら、それを単なる懐古趣味では終わらせず現代的なPopへと仕立て上げたトコロに、この曲の面白さがあるんですよね。
60年代の香りを90年代へ蘇らせたLenny Kravitzのサウンド
イントロの軽やかなビートとタンバリンのキラメキが鳴った瞬間、まるで60年代のガール・グループ黄金期へと引き戻されるような感覚に包まれますね。しかしその音像は単なるレトロ志向ではなく、90年代的な洗練をまとったモダンなプロダクションっ!重心の低いドラムとオルガンの温もり、そこに差し込まれるブラスのアクセントが楽曲に奥行きを与え、シンプルながらも中毒性の高いグルーヴを形成しています。ヴィンテージな質感を愛しながらも、そのまま昔の音を再現するのではなく、自分のフィルターを通して現代のサウンドへ更新してしまうLenny Kravitzらしいプロダクションが実に見事ですね。ドラム、ベース、オルガン、タンバリン、ブラスといったひとつひとつの音は決して複雑ではナイのに、それらが重なると独特の色気と温度が生まれてくる…このシンプルなのに妙にクセになるグルーヴこそBe My Babyの大きな魅力でしょう。
Vanessa Paradisのウィスパー・ボイスが生み出す絶妙な余白
そしてナニより特筆すべきはVanessa Paradisのヴォーカルです。囁くようなウィスパー・ボイスは決して強く主張するワケではないが、その余白がリスナーの感情を自然と引き込んでゆくような印象を醸し出しています。French Pop特有の「気怠さ」と「甘さ」を併せ持ったその声は、まさにこの楽曲の世界観を決定づける要素となっていますね。歌詞のテーマはシンプルなラブソングでありながら、「そばにいてほしい」というピュアな願いをドコか距離感を保ちながら表現している点が印象的ですね。この絶妙な温度感こそが、甘すぎず、それでいてロマンティックな余韻を残す理由でもあったりします。力いっぱい歌い上げるのではなく、少し肩の力が抜けたような歌い方だからこそ、逆に耳を近づけて聴きたくなる…Vanessa Paradisの声そのものが楽器のひとつとして、このヴィンテージなグルーヴの中に溶け込んでいるようにカンジます。
ピークではなく空気を変える、DJだからこそ分かる1曲の強さ
リリース当時、この楽曲はヨーロッパを中心に大ヒットを記録し、ラジオでも頻繁にオンエアされ、クラブでもウォームアップやミドルタイムの選曲としてDJたちにプレイされました。決してピークタイム向けではないが、空間の空気を一変させるムードメイクとして非常に優秀な1曲です。DJプレイというと、どうしてもフロアをイッキに盛り上げる曲へ注目が集まりがちですが、実際にはこういう「空気を変えられる曲」が1枚バッグに入っているコトが大切だったりするんですよね。FunkやSoulの流れから自然に繋いでもイイし、PopやRock寄りの選曲へ移っていく時の橋渡しとしても使える。ジャンルをハッキリと限定できない曖昧さがあるからこそ、DJのアイデア次第で様々な使い方ができる曲でもあります。イントロが鳴った瞬間に空気がフワッと柔らかくなるような感覚は、ハデな盛り上がりとはまた違った気持ち良さがありますね。
12インチで味わいたい柔らかな音像と唯一無二のPopセンス
12インチで聴くコトで、この楽曲の真価はさらに際立っています。アナログならではの空気感、楽器の粒立ち、そしてヴォーカルの質感がより立体的に感じられるミキシングが施されていて、盤面に針を落とした瞬間に広がる柔らかな音像は、デジタルでは味わえない魅力をカンジさせてくれます。特にタンバリンの細かな響きやオルガンの温もり、ブラスがスッと入ってくる瞬間の存在感、そして中央に浮かび上がるVanessa Paradisのウィスパー・ボイス…こうした細かな音の表情をジックリ楽しむには、やはりレコードというフォーマットがよく似合う曲なんですよね。キッチュで可愛らしく、それでいて洗練された都会的センスを持つこのサウンドは、まさに唯一無二っ!French PopとSoul、Rockのエッセンスが絶妙に溶け合ったこの1曲は、コレクションとしても、リスニング用途としても間違いなく価値のある1枚ですよ。「ナンとなく気になる」そんな直感に素直になってほしいなぁ〜って思う曲であります。針を落とせば、その理由はすぐにわかるハズですよ。


