
Freeez / Keep In Touch
Londonの夜景を切り取った、洗練と熱量が交差するBrit Funk黎明期の輝き。1980年にリリースされたFreeezのデビュー・シングル Keep In Touch は、後にElectro Classic I.O.U.で世界的成功を収める彼らの原点とも言える1枚です。Freeezと聞くと、どうしてもシンセサイザーとドラムマシンを全面に押し出した80s Electro期のイメージが強いですが、この初期作品ではまだ生々しい演奏感を重視したBrit Funk〜Jazz Funkサウンドを聴かせています。後年のFreeezしか知らないリスナーが聴けば、同じグループなのかと思うホド印象が違う…しかし、ジックリ耳を傾けると、後の作品にも繋がっていく都会的なセンスとDance Musicへの鋭い感覚が、このデビュー作の時点ですでに存在していたコトがよくわかります。
I.O.U.以前のFreeezにあった生々しいグルーヴ
針を落とした瞬間に飛び込んでくるのは、軽快に刻まれるギター・カッティング…そこへ地を這うようなベースラインが絡み、疾走感のあるビートがフロアの空気をイッキに都会的な色へ塗り替えていきます。後の I.O.U. に代表されるElectronicなサウンドとは異なり、この時期のFreeezは人間が演奏するコトによって生まれる微妙な揺れやタイミングをそのままグルーヴへ取り込んでいるんですよね。キッチリと揃いすぎていないからこそ生まれる躍動感があり、ベース、ギター、ドラム、キーボードがそれぞれ独立して動きながら、全体ではひとつの大きなウネリを作り上げている。Brit Funkという音楽のおもしろさが、イントロからストレートに伝わってきます。
夜のLondonを思わせるキーボード・ワーク
特に印象的なのが、空間を大きく使ったキーボード・ワーク!単なるコード演奏として楽曲を支えるのではなく、音の余韻や広がりを巧みに使いながら、夜のLondonを上空から見下ろすような奥行きを作り出しています。Funk特有のタイトなリズムが地面を走っている一方で、キーボードはその上空を自由に漂っているような感覚…この上下方向への音の広がりが実にイイんですよね。Jazz Fusion的な洗練を持ちながらも、決して演奏技術を見せつける方向へ行かず、あくまでダンスフロアで身体を動かすためのグルーヴへ還元している。この知的でありながらしっかり踊れるバランス感覚こそ、UKならではのJazz Funkサウンドの魅力でしょう。
UK独自の進化を遂げたBrit Funk黎明期
当時のUKでは、American FunkやJazz Fusion、Discoから受けた影響をそのまま模倣するのではなく、自分たちなりの感覚で再構築したBrit Funkムーブメントが加速していました。Light Of The Worldなどに代表されるそのサウンドは、US産Funkが持つ泥臭さとは少し違い、ドコかクールで都会的。それでいて演奏そのものには強烈な熱量があり、この独特のコントラストがUKのクラブシーンで支持されていきます。この Keep In Touch にも、その時代特有の空気が濃密に刻まれています。黒さはあるけれど重すぎず、Jazzの洗練はあるけれど難解ではナイ…Dance Musicとしての機能性を失うコトなく、演奏の楽しさまでしっかり聴かせてくれるんですよね。
若きBlueyが刻んだ鋭く瑞々しいギター
そして特に注目したいのが、後にIncognitoで世界的に活躍するJean-Paul "Bluey" Maunickがギターで参加している点でしょう。Blueyのギター・カッティングは鋭く、それでいてドコか瑞々しい…リズムを細かく刻みながらも前へ出すぎず、ベースやドラムの隙間へ絶妙に入り込むコトでグルーヴ全体を押し上げています。後のIncognitoへと繋がっていくJazz、Funk、Soulを横断する感覚が、この時点ですでに垣間見えるトコロも興味深いですね。黒さを持ちながらも洗練されていて、ハデなソロを弾かなくても存在感がある。このギターを追いかけながら聴くだけでも、Keep In Touchという楽曲が持つグルーヴの精密さがよくわかります。
ハデに煽らずフロアを温める絶妙なテンション
楽曲自体は非常にダンサブルでありながら、聴き終えた後にはドコかメロウな余韻が残ります。ハデなブレイクで煽るワケでもナイし、キャッチーなフックだけでイッキに持っていくタイプでもナイ。それなのに聴いているうちにジワジワと身体が動き始める…この感覚がたまらないですね。DJ視点で聴けば、ピークタイム直前の空気を整える時間帯にバツグンの威力を発揮するタイプのサウンドでしょう。まだフロアを爆発させる必要はナイ。しかし、これから始まる夜への期待感は高めたい。そんな時間帯に Keep In Touch を差し込めば、軽快なギターとベースがフロアを少しずつ温めながら、自然に次の展開へ導いてくれるハズです。
生演奏からElectronicへ向かうFreeezの原点
そして何より驚かされるのは、これがFreeezのデビュー・シングルだという事実です。後に彼らはElectronicな要素を大胆に取り込み、I.O.U.という世界的なElectro Classicを生み出すコトになりますが、その変化を知った上で Keep In Touch を聴くと非常に興味深い。表面的な音色こそまったく異なるものの、「ダンスフロアでどう鳴らすか」という発想は最初から一貫しているようにカンジられるんですよね。1980年には生身のベースやギター、キーボードでグルーヴを作り、それが数年後にはシンセサイザーやドラムマシンへ置き換わっていく…その変化は、FreeezだけではなくDance Musicそのものが80年代に経験した大きな転換とも重なります。
Brit Funkから80s Dance Musicへ繋がる1枚
だからこそ、この Keep In Touch は単なるFreeezの初期作品として片付けるには勿体ない1枚です。Brit Funk、Jazz Funk、Boogie、そしてその後に登場するElectronic Dance Music…それぞれがまだ明確に分かれる前の時代に、それらを繋ぐ感覚がこの曲には確かに存在しています。生演奏ならではの熱量がありながら都会的で、Jazz的な演奏力がありながら徹底してDanceable。この絶妙なバランスは、後のUK Dance Musicへ繋がっていく重要な感覚だったのでしょう。時代が変われば使う楽器も制作方法も変わる。しかし、人を踊らせるためのグルーヴを追求する姿勢は変わらない…そんなDance Musicの進化を1枚のレコードからカンジ取れるトコロも、この曲のおもしろさです。
I.O.U.以前を知ればFreeezがもっとおもしろくなる
I.O.U.だけでFreeezを知っているなら、ゼヒその数年前まで時間を巻き戻して、この Keep In Touch に針を落としてみてほしいですね。そこにあるのはドラムマシンでもElectroでもなく、若いミュージシャン達が楽器を鳴らしながら生み出した瑞々しいBrit Funkのグルーヴです。しかし、その奥には後のFreeezへ繋がる都会的なセンスが確かに存在している。Brit Funk好きはもちろん、Jazz Fusion、Boogie、Early Dance Music好きにも深く刺さる完成度っ!針を落とせば、1980年のLondonの夜へふっと連れていかれるような感覚があります。I.O.U.以前のFreeezを知るコトで、このグループの本当の魅力と、Brit Funkから80s Dance Musicへ移り変わっていく時代の熱気まで見えてくる…そんな歴史的価値すらカンジさせるUK Jazz Funkの重要作です。

