
A Taste Of Honey / I’m Talkin’ Bout You
スラップベースが夜を切り裂く、都会派Boogie Discoの完成形
1980年、DiscoからBoogieへとシーンが移行し始めた絶妙なタイミングでリリースされたA Taste Of Honeyの I’m Talkin’ Bout You のレコメンド。彼女たちのキャリアの中でも最も脂の乗った時期に生まれたこの1曲は、単なるダンス・トラックにとどまらない、洗練された都会的グルーヴを体現した珠玉の作品となっています。70年代後半のDiscoが持っていた華やかさを残しながらも、サウンドはよりタイトに、よりミニマルに、そしてベースやギターといったリズム楽器そのもののグルーヴを前面に押し出していく…まさにDiscoから80年代Boogieへとサウンドが変化していく瞬間を、そのまま盤面に刻み込んだようなナンバーなんですよね。
イントロを支配するスラップベースと絶妙な音の配置美
針を落とした瞬間に飛び込んでくるのは、唸るようなスラップベース…これがすべてを決定づけるイントロであり、リスナーをイッキにフロアへと引き込む強烈なフックになっています。そこに絡むカッティング・ギターの軽快なリズム、ムダのないドラムのタイトな打ち込みが絶妙な隙間を生み、まさに音の配置美と呼ぶべき完成度の高いアンサンブルを構築しています。何か特別にハデな音が鳴っているワケではないのに、ベース、ギター、ドラムがそれぞれのスペースを譲り合うように配置されているからこそ、グルーヴそのものが前へ前へと押し出されてくる。この音数を詰め込みすぎない感覚が実にイイんですよね。DJ視点でもイントロからこれだけ強烈なベースラインを持った曲は使いやすく、ミックスした瞬間からフロアのカラダを自然と反応させてしまうチカラがあります。
シルキーなヴォーカルと硬質なFunkグルーヴのコントラスト
ヴォーカルを務めるJanice M. Johnson & Hazel P. Payneの歌声は、どこまでもシルキーで柔らかい…しかし、その優しさとは裏腹にバックで鳴り響くビートは極めてファンキーで硬質であるという、このコントラストが実に見事で、単なるBoogie Discoを超えた何度でも聴き返したくなる音楽へと昇華させています。AメロからBメロ、そしてサビへとスムースに展開していく構成も非常に完成度が高く、どのパートを切り取ってもグルーヴの密度が落ちることが一切はありませんっ!ヴォーカルが前へ出る場面でもリズムセクションの存在感は失われず、逆にインストゥルメンタル的な部分でも歌の余韻がシッカリと残っている。このヴォーカルと演奏の絶妙な距離感によって、ダンサブルでありながら耳にもココチよい、都会的で洗練されたサウンドが生まれているのでしょうね。
George Dukeが融合させたファンクネスとエレガンス
プロデュースを手がけたのはGeorge Duke…JazzやFusionのフィールドで培った音楽性を背景に、ファンクネスとエレガンスを見事に融合させたサウンドは、当時のクラブシーンでもひときわ異彩を放っていました。ラジオフレンドリーでありながら、フロアでもしっかり機能するバランス感覚は、まさにプロデューサーとしての手腕の賜物ですね。演奏のテクニカルな部分を必要以上に前面へ押し出すのではなく、あくまでDance Musicとして気持ち良く聴かせながら、その奥では細かなアレンジや楽器同士の掛け合いが緻密に組み上げられている…この辺りはGeorge Dukeならではの音楽的な懐の深さをカンジさせます。歌詞はシンプルながらも、愛や想いをストレートに伝えるメッセージ性を持ち、音のグルーヴと相まってココチよい高揚感をもたらします。ハデさに頼らず、音の質感と構造で魅せるこの楽曲は、時代を超えて響くエバーグリーンな魅力を備えています。
PromoオンリーのUS盤12インチで味わうBoogieの真価
そしてレコード好きとして見逃せないのが、US盤の12インチシングルはPromoオンリーという点です。市場に出回る数は限られており、コレクターズアイテムとしての価値も十分っ!しかも単に珍しいというだけではなく、この曲の魅力であるスラップベース、タイトなドラム、カッティング・ギターの細かなニュアンスを楽しむには12インチというフォーマットが実に良く似合います。針を落とした瞬間、低域からグッと立ち上がってくるベースの存在感と、そこへ絡むギターやドラムの輪郭が立体的に広がり、この曲が持っている「音の隙間」までグルーヴとしてカンジられるんですよね。DJバッグへ忍ばせておけばDiscoからBoogie、Funkへと繋ぐ流れでもシッカリ使えるし、自宅ならベースラインを追いながらジックリ聴き込むのもイイ。イントロの一音でココロを鷲掴みされるこの感覚、ぜひ体験してみてください。12インチに針を落とした瞬間から、80年代初頭のダンスミュージックが到達したひとつの頂点が、確かにカンジられますよ〜。

